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Channel: カメラ修理屋の気まぐれ雑記帳
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FOCA FLEX Ⅱ

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久しぶりにフォカフレックスの修理が来ました。
一見、一眼レフには見えない、
フランスらしい、おしゃれなカメラです。
Ⅱ型は、Ⅰ型をレンズ交換式にしたものです。

イメージ 8

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フォカフレックスがユニークなのは、
デザインだけではありません。
レンズシャッター式の一眼レフなのですが、
ペンタプリズムを使わず、独特の方法を使っています。

レンズを通ってきた光は、
まず、リターンミラーでなんと下に反射させます。
そのためリターンミラーは下向きなのです。
反射させた下には、裏にミラーが付いているスクリーンがあり、
そこで結像した像は、今度は上方へ反射されます。
なんとリターンミラーはハーフミラーになっていて、
結像した像は、リターンミラーを通過して、
上にあるダハプリズムで左右が反転されてファインダー像となります。
ハーフミラーを使っている割にはファインダーは明るいのですが、
なぜ、わざわざこんな複雑な方法にしたのでしょうかね。


イメージ 2



ところで、レンズシャッターの一眼レフは、
シャッターがリターンミラーより前に付いているので、
シャッターが開いていなければファインダー像が見えません。
しかし、シャッターが開くとフィルムが感光してしまうので、
フィルムの前には遮光板があります。
シャッターを押すと一度シャッターが閉まり、
その後にこの遮光板が開いてからシャッターが開閉します。
撮った後に巻き上げると、
再び遮光板が閉まった後でシャッターが開きます。

今回の個体は、巻き上げが途中で止まってしまいます。
以前修理したのは、もう10年以上前のような気がするので、
思い出しながらの分解となりました。
何しろ外観にはシュー以外にネジが見えず、
知らないと、上カバーを開けるだけでも悩むカメラです。
しかも上カバーを開けると、またカバーがあります。(謎)

イメージ 1



まずはボディーからミラーユニットを外します。
すると、
なんとチャージレバーの先端が折れているではないですか。

イメージ 3

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巻き上げレバーを動かすと、このレバーが横に押され、
折れている傾斜部分が横に動くとミラーと遮光板のアームを押し、
てこの原理で遮光板とミラーを持ち上げてロックするのです。
結構力が掛かるので、金属疲労で折れてしまったのでしょうか。

イメージ 7



仕方が無いので、ミラーユニットを外して部品を交換します。
部品があって良かった。

イメージ 4


レバーが横に動くと、下側にあるラック(ギザギザ)で、
シャッター軸を回してシャッターチャージします。
また見難いですが、
シャッター開口部の周りのリングにもラックがあり、
レバーが動くとこのリングも回り、
右下にあるシャッター羽根を開けるギアを回します。
また、ミラーや遮光板が開くタイミングもこの部品で行います。
つまり、レバーのラックの溝の位置とギアの位置の組み合わせで、
シャッターチャージのタイミング、
巻き上げた時にシャッター羽根の開くタイミング、
遮光板の閉まるタイミングを決めるのです。


ところが、部品を交換したら、このタイミングが合いません。
シャッターチャージに合わてレバーを入れると、
遮光板が完全に閉まらずロックしません。
遮光板がロックするタイミングの位置でギアをラックに入れると、
今度はシャッターチャージが行き過ぎて巻上げが出来ません。
しかし、位置調整するところがどこにもありません。
動いていたはずなのに、なぜ合わないのか全然分かりませんでした。
ずっと悩んだあげくに何気なく折れたレバーと比べてみたら、
なんと、レバーに取り付けられたラックの位置が微妙に違います。
(左右の隙間の違いで分かります)

イメージ 5


多分メーカーは取り付け位置が微妙に違うレバーを数種類用意し、
個体によって合わせて組んでいたのでしょう。
なんだか生産性が悪いような気がしますね。
しかし困ったことに、部品はこれしかありません。
あまりやりたくはありませんが、
遮光板をロックする溝を少し削って合わせをすることにしました。


また、このカメラには、ファインダーにも遮光板があります。
シャッターを切った時に、リターンミラーが下に下がる方式なので、
ミラーがファインダーからの光を遮光しないのです。
このファインダーのアイピースシャッターは、
遮光板と連動して開くようになっているのですが、
遮光板のロックタイミングを少し早めに変更した影響で、
完全には開かず、僅かに台形になってしまいます。
1難去ってまた1難です。ああもう。
連動するレバーを僅かに曲げて調整して対処したのですが、
最後に上カバーを取り付ける時に思い出しました。
アイピース部には、四角いカバーが付きます。
このカバーは、アイピースシャッターより小さいので、
取り付けると周辺が隠されて、台形でも全く分からないのです。
無駄な労力を使ってしまいました。ガッカリ・・・


シャッターもオーバーホールしておきます。

イメージ 6


Ⅱ型はドイツ製のプロンターが付いているので丈夫ですが、
Ⅰ型は、フランス製の独自のシャッターが付いています。
こちらが壊れると、修理不能の場合があります。


これでやっと修理が終わりました。
忘れていた部分もあったので余計時間が掛かりましたが、
結局、まるまる2日掛かってしまいました。
巻き上げると遮光板がロックするようになり、
ミラーも定位置で止まります。
ファインダーのアイピースシャッターも完全に開きます。
シャッターを切ると、
アイピースシャッターが閉まり、ミラーと遮光板が下がり、
シャッターがパシャっと開閉します。
直った時は「やった!」という充実感がありますが、
今回は「やった!」というより「やっと・・・」という感じでした。
時間は掛かりましたが、どうにか直って良かったです。
ホッとしました。


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