「リトレック」という大きなカメラが来ました。
6×9判の一眼レフカメラです。
リトレックは、武蔵野光機というメーカーが1960年代に発売したカメラです。
この手の大型一眼レフはフィルムがまだ乾板だった頃からありましたが、
ローライフレックスやハッセル等の発売の影響で人気が落ちてしまい、
戦後は殆んど無くなってしました。
しかし6×9判としてはリンホフ等のカメラより準備やピント合わせが素早くできるし、
プレスカメラ等よりレンズ交換で有利で接写も出来る。
復活させてもそれなりに需要があると見込んで発売したようです。
カメラの構造自体は昔の大型一眼レフと大して変わりはありませんが、
シャッターにシンクロが付いたり、
ミラーをスイングバックさせてボディーの厚みを薄くしようと工夫しています。
そのため蛇腹の繰り出しは無限よりも手前まで引っ込められます。
またピントスクリーンにはフレネルレンズが付いて周辺まで明るく、
拡大レンズの付いたピントフードを開けて覗くと、
6×9判ならではの大きな画像が見えてチョッと感動します。
また6×9判で問題になるフィルムの平面性も、
長いフィルムホルダーを使って出来るだけ平面性を良くしようとしています。
ただその分、ホルダーだけが横に出っ張ってしまっています。
この固体はシャッターリボンが切れてしまっていて、
幕も硬くなっていましたので幕交換を兼ねてオーバーホールしました。
このカメラの修理で困るのは、
黒い革に見える部分が何と表面を硬化させた「紙」なのです。
分解するにはこの紙を剥がさないと中のネジが外せないのですが、
紙なので剥がそうとすると破れてしまい、きれいに剥がせません。
仕方が無いので、勘でネジのある部分を探してそこだけめくるしかありません。
シャッター調整用にある左右の蓋に貼ってある革(紙)は、
以前に修理した人が強い接着剤で貼り直してしまっていました。
剥がそうとするとボロボロになってしまったので、
仕方無くそこだけは柄が似ている合皮を貼り直しました。
今回一番つらかったのは、ミラーの根元にある遮光幕の交換でした。
その幕が劣化していたので交換の要望があったのですが、
まずは面倒なシャッター幕交換をしてから後でやろうと思っていました。
ところが何とそこはシャッタードラムを抜かないと交換出来なかったのです。
もうシャッター部は全て速度調整も終わり蓋も閉めたのに、
またドラムを抜かないと出来いとは。。。
泣きました・・・ ![]()

この手のカメラはあまり修理に来ないので、
いつもと手順が違うので困ってしまいました。
また、剥がした紙の革を出来るだけきれいに戻すのにも苦労しました。
手間が掛かり面倒な修理でしたが、またひとつ良い経験になりました。
このカメラを作った「武蔵野光機」は、
この後「リトレック66」というペンタプリズム式一眼レフカメラを開発します。
ペンタコン6のようなカメラでしたが、
開発や製造に手間取り会社が倒産してしまいます。
その後このカメラの製造機器を「ノリタ光学」が買い取り、
多少の改造を加えて「ノリタ66」として発売します。
しかしその頃にはもうペンタックス67やコーワ6が発売されていて、
結局知名度の低いノリタ66はあまり売れずに終わってしまいました。
.