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Channel: カメラ修理屋の気まぐれ雑記帳
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COPAL シャッターの憂鬱

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コパルのシャッターと言えば、
まだフォーカルプレーンシャッターが
布幕の横走りシャッターだった頃に、
「コパルスクエア」という金属製縦走りシャッターを作り、
それ以降フォーカルプレーンシャッターの主役にしました。
(原案を考えた茶谷さんの話は今回無しです)
また今でもレンズシャッターを製造しているのも、
コパルだけではないでしょうか。

そんなコパルのシャッターも、
最初の頃の製品はあまり良い物ではありませんでした。
戦後まもなくの国産カメラは星の数ほどあり、
中小工場も競ってカメラを作った時代でしたので、
(萩本欽一さんの父もカメラを作っていました)
シャッターを作るメーカーもたくさんありました。
そんな中のひとつがコパルでした。



今回、国産の二眼レフが修理に来ました。
簡単な構造のカメラなので、
「パパっとやって早く終わらせよう」と思ていました。
ところがコパルのシャッターをオーバーホールしようとして、
スローガバナーのネジを緩めようと回したら・・・
ポキッ!
ネジの頭だけ折れてしまいました。
裏返してよく見ると、
なんとネジは裏側からカシメて止めてありました。
これではネジ穴をドリルで抜いて、
新しいネジを入れても止まりません。

仕方が無いので、
知り合いに「誰か古いコパルシャッター持ってない?」
との一斉メール発信。
上手い具合に、
ジャンクから抜いたスローガバナーを送ってもらえました。
これに入れ替えて終了。

…と思ったら、
なぜかスローガバナーを止めるネジを締めると、
ガバナーがスムーズに動かない。
え?
ルーペで良~く見てみると、
ほんの僅かにガバナーが歪んでいます。
歪みを取ろうと押したり叩いたりしたら、
ますます動かなくなってしまいました。


仕方が無いので翌週のカメラ屋回りの時に、
どうにかまたコパル付きカメラのジャンクを入手。
今度は祈るような気持ちでガバナーを入れ替えると・・・
動いた!
(^^)v

ところが1/10秒が1/25秒と変らない。
こちらのガバナーの方が駆動アームが僅かに短い。
同じシャッターなのになぜ?
よく見ると、
こちらのシャッターはアームを叩くカムの方が長い。
つまり2つセットで交換しないとダメ。
ところがカムも交換して入れようと思ったら、
僅かに穴が小さくて入らん!
棒ヤスリで穴をスリスリして広げて入れました。
これでどうにかOK。
はぁ、長い道のりでした。


イメージ 1


ちなみに、
シャッターダイヤルに書いてある速度数字の位置も、
2つで僅かに違いました。

見た目は全く同じ「S・COPAL」ですが、
部品の精度が悪くひとつひとつが僅かに違うのです。
当時製品を組み立てる時には、
いろいろ組み合わせて上手く動くように組んだのでしょう。
生産効率は悪かったと思います。
やはり当時ドイツのコンパーと同等の精度を持つシャッターは、
世界的に見ても無かったようです。

日本ではこの後SEIKOがシャッターを作り始め、
さすがに時計メーカーだけあって精度が良い物でした。
シチズンがシャッターを作っていた時代もありました。
コパルも徐々に精度も良くなって行き、
日本を代表するシャッターメーカーになって行きました。

そんな訳で、
「チョチョッと終わらす」はずのカメラに、
相当の時間と部品代を費やしてしまいました。
修理代を考えると「とほほ」な気持ちになりますが、
まあ、とにかく直って良かった良かった。



で、やっと次のカメラの修理です。
某店から預かった某古い国産カメラの修理です。
横を開けようとネジをひねったらボキッ!
頭だけ取れた…
ああもう!
さすがにこう立て続けだと、
カメラを窓から投げ捨てたくなりました。
ネジも折れたが私の心も折れました。
















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