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Channel: カメラ修理屋の気まぐれ雑記帳
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レンズの曇り

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レンズの曇りを取って欲しい、という依頼はとても多いです。ライカ等の古いレンズは、曇ってしまうレンズが多いですし、キヤノンの大口径Lマウントレンズは曇りやすくて有名で、拭いてもすぐにまた曇りが出てしまいます。また'50年代のDズイコーも曇っている固体が殆んどで、これは拭いても取れないことが多いです。
 
現代のレンズでも曇るレンズはあるようで、私のペンタックスのAFズームも雲ってしまったものがあります。シグマのある望遠レンズは、クリーニングしてもまた曇りが出てしまうので、メーカーが常に無料でクリーニングしているという話も聞きます。曇る原因が、未だにレンズメーカーでも把握できないところがあるようです。
 
 
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レンズが曇る原因として考えられるのは、レンズのガラスに含まれる物質の酸化です。レンズのガラスには、屈折率を高めるためにいろいろな金属や物質が混ぜられています。以前はレンズに鉛が含まれていましたが、公害問題が出てからは鉛を使えなくなり、その後に無鉛で作られたレンズは、性能が落ちてしまった時代もありました。表面に出ているそれらの物質が、長年経つと空気で酸化して曇りが出てしまうのです。酷い場合は、レンズの表面が曇りガラスのようにザラザラになってしまったりします。 脱臭剤や防腐剤の入った棚に入れておくと曇りが進む場合がありますので、注意が必要です。
 
この他に、レンズのヘリコイドや絞りリングに使われているグリスが揮発してレンズの内部に入り込み、曇らせてしまうこともあります。この場合は拭けば取れることが多いようです。
 
また、レンズを貼り合わせているバルサムが曇る場合もあります。これはバルサムを貼り直さないかぎり曇りは取れないので困ります。ライツカナダ時代のズミクロン35mmや、ペンタックスのMレンズに多く見受けられます。私のペンタックスのMレンズも、曇りが出てしまい困っています。これはバルサムの質なのでしょうか。
 
 
レンズの曇りは、取れるかどうかは分解して拭いてみない限り分かりません。外から見ただけでは見分けが付かないのです。向こうが見えないくらい真っ白になっていてもきれいに取れる場合もありますし、薄い曇りでも全く取れない場合もあります。ただ、薄いうちなら取れる可能性が高いですから、レンズの曇りに気が付いたら、早めにクリーニングに出した方が良いです。
 
 
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ライツの白鏡筒時代のレンズのように、内部レンズのコーティングが弱いと、曇りを取るとコーティングも一緒に剥がれてしまうことがあります。レンズ表面の酸化が、コーティングも一緒に腐食させてしまっているのです。しかし「コーティングが剥がれるのは絶対に困る」というお客さんもいます。1面くらいコーティングが無くても、全くと言っていいほど影響はありません。曇りがある方が余程影響が出ます。しかし、どうしてもコーティングが必要という場合は、再コーティングに出すしかありません。1面につき1万円~2万円修理代がプラスになります。
 
 
レンズの薄い曇りは、大口径レンズの場合は少しコントラストが落ちるくらいで大きな影響はありませんが、径が小さなレンズは影響が大きく出ます。また広角のように、中玉が小さくなっているレンズが曇っている場合も影響が大きいです。特にコンタックス用のテッサー28mmやトポゴン25mm、ライツのヘクトールやズマロン28mm、キヤノンの25mmなどは、レンズ径が小さいので曇りに気が付き難いですが、曇りを取ると、それこそ目から鱗が落ちたように良く写るようになったりします。(前玉に傷が多いとダメです)
 
レンズの曇りは、薄いうちはなかなか気が付きません。一番良く見えるのは、ペンライトで内部を斜めから照らす方法です。角度を変えていろいろやってみると見えます。曇りを発見すると凄くがっかりしますが、曇りはどんどん酷くなって行くことが多いですので、薄いうちにクリーニングに出すことをお薦めします。
 
 
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