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Channel: カメラ修理屋の気まぐれ雑記帳
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初仕事は 幻の?カメラ

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まだ正月休みの方々もいらっしゃると思いますが、
我が家は夫婦共々、今日が仕事初めでした。

私の今年の初仕事は、
ハンガリー製の珍品カメラ「デュフレックス」でした。
初仕事と言っても、年末にやり掛けていた続きなのですが。


イメージ 9



デュフレックスは、戦後すぐに作られた一眼レフのカメラです。
しかし製造数が極端に少なく西側諸国にも輸出されなかったため、
殆ど存在を知られていない、幻のカメラでした。
未だに、はっきりとした製造年や製造数は分からず、
レンズにコーティングが無いことなどから、
戦前か戦中に企画され、
戦後すぐに少量製造されたのではと言われています。

日本では、1969年に初めて現物が確認され、
翌年、旭光学の手で分解、徹底的に検証されました。
というのも、
世界初のクイックリターンミラーを実現したのは、
長い間、アサヒフレックスだと思われていました。
しかし戦後すぐに作られたと思われるこのデュフレックスは、
既にクイックリターンミラーを装備していたのです。
それだけではありません。
アサヒフレックスがまだ上から覗くファインダーだったのに対し、
このカメラは、ポロミラーを使用したアイレベルファインダーでした。
しかもシャッターは1軸不回転シャッターで、
なんと金属幕のメタルフォーカルプレーンシャッターでした。
レンズはシャッターを切ると同時に絞られる半自動式、
レンズマウントはバヨネット式でした。
これはもう、旭光学もビックリだったことでしょう。


バヨネット式のレンズマウント

イメージ 10



このカメラは一眼レフなのに、
普通の光学式ファインダーも装備されています。
アルパやプラクチナもそうですが、
当時はまだ一眼レフのファインダーには違和感があったのでしょう。
このカメラを後ろから見ると、何とも変な感じがします。

左下が一眼レフファインダー・真ん中が光学式ファインダー

イメージ 1



この光学式ファインダーも凝った作りになっていて、
M型ライカより早く採光式ブライトフレームを採用しています。
ただ、結局交換レンズは発売されませんでした。

イメージ 2



しかし今回のこの個体は、
ハーフミラーが劣化していてフレームが殆ど見えません。
そこでハーフミラーを交換します。

イメージ 3

ハーフミラーや反射ミラーの全てが、
板枠で固定されています。
ショックで位置が狂わないのか少し不安な構造でした。


このカメラは、シャッターはきちんと動いているのですが、
時々Bでシャッターが止まらないことがありました。
う~ん、このカメラを分解するのは怖いなぁ。
何せ、もし壊してしまったら、
弁償すればまた買えるという代物ではありません。
でも、どういう構造なのか見てみたいという好奇心もあります。
そこで、恐~る恐る開けてみます。

イメージ 4


このカメラのスローガバナーは、
M型ライカと同じように、片側にある軸を中心にして、
ユニット自体が動くようになっています。
Bが掛からなかった原因は、
軸の動きが悪くてガバナーユニットの動きが渋くなっていました。
グリスアップしてもネジを締めると渋くなるので、
ネジの軸に薄いワッシャーを入れて対処しました。


このカメラの金属幕の駆動方法が凄く変っていて、
シャッタードラムの代わりに回転する軸から出たアームが、
幕の端にある縦穴に引っ掛かっていて、
軸と一緒にアームが回転することによりシャッター幕が動きます。
幕の上下にあるスリットの中を幕が曲がって動くのには驚きました。
このカメラの金属幕は、一体何で出来ているのでしょうか。

イメージ 5




クイックリターンミラーの構造にも興味があったのですが、
ミラーユニット自体は、簡単な作りでした。
ただ、ミラーはスイングバックをして上に上がるようになっています。

イメージ 6

スクリーンに埃が入っているのですが、
スクリーンを外すには、ミラーを外さないと外せません。
しかしミラーはカシメで止めてあるし、
ミラーの固定位置が少しでもズレると構図がズレてしまうので、
埃は我慢していただきましょう。


ミラーの上下駆動は、
前幕・先幕を動かす軸から出た突起がアームを動かし、
そのアームの突起が上下に動いてミラーを上下させていました。

イメージ 7

こうやって見ると簡単な構造ですが、
当時はどのメーカーも、
クイックリターンが実現できずに苦慮していたのです。


底を開けてみると、
そこにも(駄洒落じゃないよ)驚きの光景が現れました。
なんと、先幕の軸をチャージするための連動方法が、
紐で引っ張るという方法だったのです。
これが切れたら大変だ。

イメージ 8

これを見てからは、
必要な時以外は巻き上げないようにしました。


このように、
デュフレックスは限りなく個性的なカメラでした。
もし当時このカメラが西側でも発表されていたら、
もっと一眼レフの開発競争は早くなっていたかもしれません。
このカメラにペンタプリズムを乗せた試作もあったようですが、
発売はされなかったようです。
なぜ同じ東側で発売されたコンタックスSは、
この構造でクイックリターンにしなかったのでしょうか。
やはり何か大きな問題があったのでしょうか。

デュフレックスというカメラの存在は知っていましたが、
一生触ることも無いカメラだと思っていたので、
まさか自分の手で分解する機会が来るとは思いませんでした。
もし壊してしまったら新年早々また血尿が出るところでしたが、
無事、元に組み上げることが出来て良かった。


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